症例紹介 CASE

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会陰尿道造瘻術

院長の橋本です。

前回の続きです。

オス猫の尿道閉塞により

①カテーテル挿入で閉塞を解除できない

②再発を繰り返す

③尿道狭窄

などがある場合は、外科手術を選択することがあります。

ですが、外科手術はあくまで最終の救済処置であり、メリット・デメリットを十分主治医と相談し確認してもらうことが必要です。

手術は、会陰尿道造瘻術、恥骨下尿道造瘻術、経恥骨尿道造瘻術などがありますが、猫の場合、ほぼ『会陰尿道造瘻術』を選択することが多いです。

オス猫の尿道は、構造的に尿道が狭く長いので閉塞しやすいです。尿道閉塞部は大体ペニス先端から5~6㎝くらいでしょうか?骨盤部尿道から外に出るところから、特に細くなっていき閉塞を起こしやすくなります。

外科手術は閉塞のある尿道と陰茎を取り除いてしまいますので、その決断をしてもらうことになります。温存できるのであれば、自分の尿道・ペニスを生涯使えた方がもちろんよいです。

メリット・デメリット

手術により一般的なメリットとしては、尿道栓子や尿道結石が減り排尿がスムーズに行えるようになります。

デメリットは術後合併症などです。主には

①     出血や手術部の腫脹、それに伴う尿道瘻閉塞

②     縫合部離開、それに伴う皮下への尿漏

③     神経損傷による排尿障害

④     細菌性尿路感染症

⑤     尿路結石症の再発

などがあります。術後合併症は25%くらいでおこるという報告もありますが、尿カテーテルの調整が非常に大事で、術後の管理や猫の性格にも左右されます。

 

手術方法

当院では少し手術時間がかかるのですが、包皮粘膜を温存した方法で手術を行っています。

従来法との違いは尿道の粘膜を直接開口させるのではなく、陰部の形状を保ったまま包皮粘膜を介して排尿できるため、陰部周囲を清潔に保つことができます。

  

イメージは上図の通りです。骨盤部尿道のところで尿道が太く柔らかくなるため、切除するところ(赤ライン)は従来法と同じなのですが、尿の出るところが包皮内に開口することになります。

従来法では皮膚に直接開口することになるので、猫砂がくっついたり、尿で皮膚が荒れたり、長毛種では毛量が多いので定期的な毛抜きを必要とする場合もありました。

包皮を温存した方法では、見た目の変化がほとんどなく、陰部も清潔に保てます。

しかし、尿結石の予防などで食事療法が必要なことや細菌感染を起こしやすくなることは同じなので、注意が必要です。

 

①     陰茎後引筋の剥離

②     坐骨海綿体筋の切断

③     坐骨尿道筋の切断(剥離時神経注意です)

 

 

 

 

 

 

術後写真

オーナー様の許可が頂けたので、術後の写真を何枚か載せてみます。排尿は順調そうです。

 

 

 

退院後1週間くらいは若干、排尿前の一滴があったようですが、

 

今は快適に大量に排尿出来ているそうです。

 

あくまで当院で行っている診断・治療を元にしています。

ご参考にしていただけたら幸いです。

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